戸崎の浅間塚
市指定有形民俗文化財
(ふりがな) とさきのせんげんづか
【文化財名】 戸崎の浅間塚
【指定番号】 第71号
【種別】 民俗文化財・有形民俗文化財
【員数】 1基
【指定年月日】 平成5年7月1日
【所在地】 浅間神社(上尾市戸崎)
【概要】
浅間塚は、一般には「富士塚」ともいわれ、江戸時代後半から江戸を中心とした地域で造られるようになった塚です。これは当時流行した富士浅間信仰によるもので、富士山参詣が難しいことから、女性や子どもでも簡単に参拝ができるように、居住地の近くに富士山を模した塚を祭るという趣旨で造られたものです。特に埼玉県東部地方の富士塚では、「初山」と呼ばれる民俗行事と関連があります。この初山行事は、7月1日に生まれて間もない子どもを富士塚にある浅間神社に参拝させ、子どもの健康を祈願するというものです。
「戸崎の浅間塚」は「浅間様」といわれる富士塚です。高さ約4.8m、直径約25mの円形の塚で、市内最大級の富士塚です。築造年代は不明ですが、19世紀前半と考えられます。この塚と塚上にある浅間神社は、戸崎村の創始伝承の中で開発領主とされる長沢家が所有し、塚で行われる行事を祭主としてつかさどっています。現在は、塚上だけに社殿がありますが、以前は塚下にもあり、塚上を高浅間、塚下を下浅間といいました。当時は、高浅間を男が、下浅間は女が参拝するものだといったそうです。
毎年7月1日には、前述の初山行事を長沢家と、その直接の古い分家といわれる3軒、それに挟み箱持ち役の1軒を加えた5軒の家で執行しています。参拝者は、市内旧大谷村の範囲とこれに隣接する大宮市の一部地域の人が多く、初山で参拝する子どもには、祭主が肌着の後ろ襟の内側に判子を押します。
このように「戸崎の浅間塚」は、独特な歴史的背景と民俗的背景とを持った塚であり、上尾市とその周辺地域の民俗信仰を考える上で重要な民俗文化財といえます。
市刊行物のご案内
上尾市文化財調査報告
第58集上尾の浅間塚(平成11年3月31日)
上尾市史
第九巻別編2 金石・文化財(平成11年3月31日)