議第10号議案
UR賃貸住宅(旧公団)へ定期借家契約導入を行わないことを求める意見書
独立行政法人都市再生機構(以下、「機構」という。)は、2009(平成21)年4月3日、(1)契約期間5年、更新はしない。(2)期間中の家賃改定は行わない。(3)期間満了時に機構の都合により再契約はありうる。とするUR賃貸住宅への「定期借家契約」の幅広い導入を決め、2009年度の試行実施32団地約3万戸(埼玉では狭山台団地など3団地約2600戸)を指定し、「団地再生予定団地の戸数をあわせ、全国77万戸の住宅の2割に拡大する」と発表した。
これに対し、全国の公団住宅居住者で構成する「全国公団住宅自治会協議会」は、定期借家契約の導入は、国が進めようとしている「住宅セーフティネット」や「在宅長寿対応」などの施策拡充と全く矛盾するばかりでなく、「長年にわたって自治会が培ってきた地域コミュニティを壊してしまうことになる」と強く反対し抗議をしてきた。
この定期借家契約の導入は、規制改革会議の「規制改革推進のための第3次答申」(2008(平成20)年12月22日)によるもので、同答申は、機構における定期借家契約の幅広い導入について、「…定期借家契約であれば期間満了時の家賃改定、退去の要請など柔軟に対応が可能であり、貸主である機構の整理合理化に向けても資する契約形態」、「…機構は様々なトラブルで裁判など多数行っているが、…期間の定めのある定期借家契約であれば、多くの問題は解消し、紛争コストも大幅に下がる」などとしている。
衆議院国土交通委員会(2009年6月17日)で政府参考人(内閣府規制改革推進室長)は、定期借家の導入の理由を問われ「…細かい議論については今のところ、ちょっと整理されていない」と答え、閣議決定の当事者の一員である金子国土交通大臣(当時)までも「(UR賃貸住宅への導入は)定期借家契約の本来の趣旨と違うのではないか、もう少し議論が必要である」と述べ、政府参考人も「何で整理されてないのか、私もよくわからない。議論を政府側でもう少し詰めてもらったほうがいい」などと答弁している。
このような答弁が出てくることは、定期借家契約の導入が規制改革会議の答申を「丸呑み」にしたものであり、規制改革会議がいう「都市機構の業務の合理化に資する」こと、「借家人の追い出しが目的」であることは明らかである。
こうした経過があるにもかかわらず、規制改革会議は、昨年12月4日提出の「更なる規制改革について」において、「閣議決定したものが、なぜ実施されないのか、粛々と実施するよう」迫っている。
UR賃貸住宅居住者には何のメリットもない定期借家契約を「閣議決定」の一言だけで実施することには納得できない。定期借家契約の導入は、居住者個々人の居住の安定を奪うばかりでなく、借家契約内容の異なる居住者の混住は、団地管理とコミュニティ形成に著しい困難をもたらすことが予想される。
よって、国及び政府においては、UR賃貸住宅へ定期借家契約の導入を行わないことを強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき、意見書を提出する。
平成22年3月19日
上尾市議会
平成22年3月19日
提出者 上尾市議会議員 長沢 純
賛成者 上尾市議会議員 渡辺 綱一
賛成者 上尾市議会議員 秋山 もえ
賛成者 上尾市議会議員 池野 耕司
賛成者 上尾市議会議員 佐野 昭夫