議第16号議案
軽度外傷性脳損傷に係る周知及び適切な労災認定に向けた取り組みの推進を求める意見書
軽度外傷性脳損傷は、転倒や転落、交通事故、スポーツ外傷などにより、頭部に衝撃を受けた際に脳が損傷し、脳内の情報伝達を担う「軸索」と呼ばれる神経線維が断裂するなどして発症する疾病である。
その主な症状は、高次脳機能障害による記憶力・理解力・注意力の低下をはじめ、てんかんなどの意識障害、半身まひ、視野が狭くなる、匂いや味が分からなくなるなどの多発性脳神経まひ、尿失禁など、複雑かつ多様である。
しかしながら、軽度外傷性脳損傷は、受傷者本人から様々な自覚症状が示されているにもかかわらず、MRIなどの画像検査では異常が見つかりにくいため、労働者災害補償保険(労災)や自動車損害賠償責任保険の補償対象にならないケースが多く、働くことができない場合には、経済的に追い込まれ、生活に窮することもあるのが現状である。さらに、本人や家族、周囲の人たちも、この疾病を知らないために誤解が生じ、職場や学校において理解されずに、悩み、苦しむ状況も見受けられる。
世界保健機関(WHO)においては、外傷性脳損傷の定義の明確化を図った上で、その予防措置の確立を提唱しており、わが国においてもその対策が求められるところである。
よって、国及び政府においては、以上の現状を踏まえ、以下の事項について適切な措置を講ずるよう強く要望する。
記
1 業務上の災害または通勤災害により軽度外傷性脳損傷となり、後遺障害が残存した労働者を、労災の障害(補償)年金が受給できるよう、労災認定基準を改正すること
2 労災基準の改正に当たっては、他覚的・体系的な神経学的検査法など、画像に代わる外傷性脳損傷の判定方法を導入すること
3 画像所見が認められない高次脳機能障害の労災認定に当たっては、厚生 労働省に報告することとされているが、事例の集中的検討を進め、医学的知見に基づき、適切に認定が行われるよう取り組みを進めること
4 軽度外傷性脳損傷(MTBI)についての国際基準に準じるガイドラインの作成と医療機関をはじめ、国民、教育機関等に対し、広く啓発・周知を図ること
5 各都道府県に、支援拠点病院を置くこと
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出する。
平成26年9月19日
上 尾 市 議 会
平成26年9月19日
提出者 上尾市議会議員 道下 文男
賛成者 上尾市議会議員 町田 皇介
〃 〃 岡田 武雄