埼玉県の東南部地域では、主として神社の祭礼に神楽を奉納する事例が多く、上尾市域では、特に4月ごろに行われる祭礼で神楽を奉納しています。
神楽は、祭礼を執行する神社の氏子から、太夫元と呼ばれる神楽師が請負って上演します。三匹獅子舞や祭り囃子といった民俗芸能の場合、主として自分の村の祭礼で上演することを目的に芸能を伝承することが基本ですが、神楽の場合は、他所から請負って上演することが基本となっています。上尾市には、沖の上(現在の浅間台)や西門前に太夫元がいましたが廃業し、現在神楽の太夫元はいません。
神楽の上演は、基本的に神社境内の神楽殿で行いますが、神楽殿のない神社では境内の集会施設や神社の拝殿で行います。上演は3演目程度が一般的です。最初に上演されるのは三番叟です。三番叟は住吉三神とも呼ばれ、神楽の最初に上演されて、その場を清めるような意味があると考えられています。その後、2演目程度上演されますが、2演目目は出雲神詠を上演する例が多いようです。出雲神詠は、蛇殺しとか大蛇退治とも呼ばれ、須佐之男命が八岐大蛇を退治する出雲神話を題材にしたものです。この演目が多く上演されるのは上尾市域に須佐之男命を祭神とする氷川神社が多いためです。
この神楽は、太鼓や笛などにあわせて、パントマイムのような無言劇です。ただし、一部の演目では、役によって台詞のある場合があります。
また、神楽の上演に先立って神社の氏子の家々を神楽師が廻り、希望する家の氏神の前で神楽を行うことをツケガマといいます。ツケガマでは、巫女舞や狐の舞を行います。
現在、上尾市域では中平塚の氷川神社、平方の八枝神社で定期的に上演しています。